壁は人の活動を制限する。その役割を保ちつつも、その場所での多彩な活動をつくりだすことはできないだろうか。
つつじが丘の文化複合施設では、壁になりきれないものをつくることで、そこに多義性を生み出し、使い手の活動を支えることを行った。空間を隔てていた壁たちは一度分解され、くぐることができる枠となり、透過する薄いガラスとなり、また部屋へとつづく扉となり、揺らめきながら稼働する銀色のカーテンとなる。さらにこれらの壁のようなものたちには色が付けられ、利用者が開けたり、くぐったり、ひっくり返したり、引っ張ったりすることで、身体とそれらの動きが強調される。壁のようなものたちと人と、そこでの活動が一体となって空間が動き出す。
駅からほど近い幹線道路沿いに位置し、ダンススクールや本屋、塾、商店街の集会場となるつつじが丘の文化複合施設、ここでは壁のようなものたちによって、使い手とともに出来事やパフォーマンスをつくり出していくことを考えた。
竣工時に目的や使い方が固定されるのではなく、使い手の要望の変化に応じて、その街の風景とともにそれらを変遷させていくことはできないだろうか。
浜町のはなれでは、積層された鉄骨フレームの周囲に木架構が取りつく建築構成とした。鉄骨フレームが水平力を担保することで、木架構は構造壁から解放される。この鉄骨と木架構の共存によって、躯体、開口、仕上げ、家具、金物、テキスタイル、植物など建築を取り巻く事物は変遷し、それらが街の風景の一部となる。木架構に沿って壁を立てることで書斎が生まれ、カーテンを付け替えることで寝室ができ、テラスが小さな温室へと変化する。そうして現れる建築は、住宅でありながらオフィスにもなり、図書館、ヨガスタジオ、ギャラリーにもなっていく。
阪神打出駅から徒歩5分ほどの芦屋市の大通り沿いに位置する浜町のはなれ。通りには家族連れから学生まで多くの人が行き交い、道端には住民が育てた植栽が並び、木陰にはベンチが置かれる。浜町のはなれは、そうした町を形づくる要素とともに、訪れる人々によって、新しい街の風景をつくっていく。